令和3年 高松興正寺別院 春の法要

4月27日(火)午前10時より、高松興正寺別院 春の法要が勤修されました。

例年はおときを挟んで、朝座と昼座の二座にわたって勤修していた春の法要ですが、昨年春より続く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、前回の秋季永代経と同様、おときを中止とし、午前中のみの法要に規模を縮小して勤修する運びとなりました。

法要勤修にあたっては、「検温」「手指消毒」「マスク着用」「密集を避ける」「換気を実施する」など、できる限りの感染防止策を施しました。

この日は、春らしい晴天に恵まれ、換気のために、終始、窓を開けておりましたが、暑過ぎず、寒過ぎず、過ごしやすい一日でした。
ここ数日の県内の感染者数も横ばいから増加傾向にあり、決して出やすい状況ではありませんでしたが、34名の方が熱心に参拝してくださいました。

午前10時より、『阿弥陀経』を正宗分にしたお勤めが行われました。例年ですと、各組から代表出勤、および各寺院から自由出勤をお願いし、たくさんの僧侶による賑々しいお勤めになるのですが、今回はコロナ対策のため、代表出勤、および自由出勤の募集を中止させていただき、内陣出勤者は、輪番、副輪番、前輪番、責任役員2名の合計5名に限定し、外陣でお勤めをする知堂も3名に限定させていただきました。

出勤者全員がマスクを着用し、少人数でのお勤めになりましたが、大変、厳粛な読経が堂内に響き渡りました。
お参りさんの中には、自分の経本を持参されて、『阿弥陀経』を一緒に拝読する姿も見られました。

法話は本山布教使 西ハゼ町 大乗寺住職 中原大道先生にお願いしました。

中原先生は、コロナ禍による生活様式の変化や、ご自身の娘さんが、昨年、県外の大学に進学されたことを通して、今の若者の傾向について、たくさんの事例を挙げてお話してくださいました。

中原先生ご自身は、学生時代に運動部に所属されていたこともあり、先輩に厳しく指導され、先輩に対して粗相がないように、周りに気を配ることが自然に身についていかれたそうですが、今の若者は叱られ慣れていないため、少しでも厳しくするとついてこれなかったり、学校の先生が叱ると親からクレームがきたりして、なかなか指導が難しいそうです。

しかしそれは、「今の若者が悪い」ということではなくて、中原先生は「時代による感覚の違い」だと仰います。
もちろん、今の若者にもいい傾向があり、全体的に真面目な人が多く、言われたことは素直に取り組んだり、争いごとを避けたりと、一概に昔がよかったとも言えません。それぞれに良し悪しがあります。

このような昨今の傾向を踏まえ、中原先生は『阿弥陀経』の中から、「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光 微妙香潔」の経文を取り上げられ、人それぞれ常識が違う現代社会において、「それぞれの色の花が自分の色に光り輝くこと」の大切さを教えてくださいました。

また、お釈迦さまが誕生されたとき、北に向かって七歩進み、右手で天を、左手で地を指して、「天上天下唯我独尊」と宣言されたエピソードを紹介され、「天上天下唯我独尊」の意味について、「この世の中でたった一人の私である」「一人ひとりが尊く、一人ひとりが認められる存在である」ことを教えてくださいました。

また、最近は色んな「ハラスメント」が登場し、臭い匂いを排除する「スメハラ」や、楽しさを強要する「ハピハラ」などがあることを教えてくださいました。

この「ハラスメント」について、中原先生は「パワハラ」など、本当に苦しんでいる方がいるのは重々承知した上で、「色んなハラスメントの登場は、自分が嫌だと思うことを排除する傾向にあるのでは」と指摘されました。

そして、「自分の思い通りにならないのが人生です。その中で、みんながお互い様だと助け合っていける世界にふと気づかされるのがお念仏です」と、お念仏の大切な意味を教えてくださいました。

このことについて中原先生は、この4月からヨットで太平洋横断チャレンジをされている元ニュースキャスターの辛坊治郎さんが出航前に語った「渡るのは舟です。私は乗って行くだけです」という言葉を紹介され、「思い通りにならないことは、身を任せるしかないのです」と、困難がたくさんある人生であっても、お念仏を申しながら少しずつ浄土に近づいていく、その歩みの大切さを教えてくださいました。

最後に、令和5年に本山興正寺で予定されている「宗祖親鸞聖人御誕生850年および立教開宗800年慶讃法要」に向けた教化スローガン「今こそお念仏-つなごうふれあいの輪」について紹介され、都市部への人口流出と、核家族化が進む流れの中で、「お仏壇に手を合わせることを、いかに次の世代に伝えていくか」という課題に触れられ、お参りさんに向けて、「お念仏の生活をつないでいくために、一緒に尽力しましょう」と、語りかけられました。

コロナ禍の中、みんながバラバラになりつつある状況の中、「みんなで一緒に」という心温まるお話をいただき、お参りさんも中原先生のお話に深く頷かれている様子でした。

法話の後は、全員で『恩徳讃』を唱和して法要を終えました。
お参りさんには、別院からのお土産として、帰りにパンとお茶が配られました。

知堂3人、教化参拝6人の役職者には、法要の準備から片付けまでご協力をいただきました。この他、たくさんの方々のご協力を賜り、無事に春の法要を勤めることができました。

この法要に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。