令和2年 高松興正寺別院 秋季永代経

10月9日(金)午前10時より、高松興正寺別院の秋季永代経が勤修されました。

例年は午前に秋季永代経を勤め、おときを挟んで、午後から本山大相続講を勤めていましたが、今年は春先より続く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、「おときを提供できない」という判断になり、午前中に秋季永代経のみを勤修する運びとなりました。

本山大相続講については、11月11日(水)午前10時より、同じく午前中のみ勤修する予定です。

法要勤修にあたっては、「検温」「手指消毒」「マスク着用」「密集を避ける」「換気を実施する」など、できる限りの感染防止策を施しました。

この日は、台風14号の接近に伴い、終日、雨模様となりましたが、台風が南方向に進路を取ったため、心配されたほどの悪天候にはなりませんでした。
足元が悪い中ではありましたが、40名ほどの参拝がありました。

午前10時より、『阿弥陀経』を正宗分にしたお勤めが行われました。各組から代表出勤を賜り、第1組 善楽寺住職の下津智願氏が法中登壇を行いました。代表出勤と自由出勤を合わせて、17名の内陣出勤があり、登壇者以外は、全員マスクを着用してのお勤めとなりました。また、通常よりも出勤者同士の間隔を空ける対策が取られました。

法話は本山布教使 御厩町 専光寺住職 佐々木安徳先生にお願いしました。

佐々木先生は、「本願を信じ念仏を申さば仏に成る」という、『歎異抄』の言葉を讃題に掲げられ、「よき言葉を口にし、よき言葉を聞いていきましょう」というお話をしてくださいました。

先生は最初に新型コロナウイルス感染症について回想され、怖いこととして、「看取りができないこと」、そして、「一人の人間の死が、死者数1という数字で片付けられること」を挙げられました。一方、有り難いこととして、「今まで当たり前であったことが、当たり前ではなかったと気づけたこと」を挙げられました。

その中で先生は、「私たちは何のために生きているのですか?」と問いかけられ、それは、「本願を信じ念仏を申さば仏と成る」という一言に尽きることを教えてくださいました。そのためには、私を支え、私を導いてくださる「杖ことば」、すなわち「よき言葉に出遇うこと」が大切なのです。

また先生は、「私たちは何に向かってお参りしているのですか?」と問いかけられ、絵本作家ヨシタケ シンスケさんの絵本『あるかしら書店』の中の「お墓の中の本棚」というお話を紹介してくださいました。

これは、一年に一度のお墓参りのときだけ墓石の中の本棚が開き、本棚の中にある故人の思い出が詰まった本を一冊だけカバンに入れます。次に、家から持ってきた天国のあの人に読んでもらいたい本を本棚に入れて、扉を閉めてからお祈りをします。そして、カバンの中の本にワクワクしながら家に帰るというお話です。

先生は「お墓参りは骨を拝みに行っているのではなく、このお話にあるように一冊の本を拝みに行っているのではないですか?」と教えてくださいました。本というのは、故人の生き様であったり、思い出であるのです。

そのことについて、先生が駆け出しだった頃、とあるお家で80歳のおじいさんが曾孫6人を呼んで、ご先祖の百回忌の法事を勤めたときのお話を紹介してくださいました。このおじいさんは法事が始まる前に曾孫たちに向けて、「今日のご先祖は大変な苦労をしてこの家の基礎を作ってくださった方だ。そのご先祖の血がお前たちにも流れているんだ。だから、お前たちには、どんな苦労でも乗り越えていく力があるんだ。そのことを知っておいて欲しいから今日の法事を勤めるんだ」と語ったそうで、「会ったことのないご先祖でも、そのご先祖の苦労であったり、思いを訪ねていく、そして、そこに大きな力をいただいていくのです」と、お参りすることの大切な意味を教えてくださいました。

最後に先生は、「にごり水でも すむときはすむ 私の心はなぜすまない。すまぬ心がお慈悲のめあて。にごり水でも月やどる」という昔の法悦歌を紹介され、「私たちは『わかっちゃいるけどやめられない』という言葉にあるように、すぐに大切なことを忘れて、自分自身に涙していきます。しかし、このような私を救うことが阿弥陀さまの願いであるのです。阿弥陀さまの智慧と慈悲のはたらきである『南無阿弥陀仏』のお念仏を申す中で、私を励まし、導いてくださるはたらきがわが身に宿っていく、そういう味わいをさせていただきましょう」というお話を頂戴しました。

とても考えさせられるお話をいただき、お参りさんも佐々木先生のお話に深く頷かれている様子でした。

法話の後は、全員で『恩徳讃』を唱和して法要を終えました。
お参りさんには、別院からのお土産として、帰りにパンとお茶が配られました。

知堂8人、教化参拝6人の役職者には、法要の準備から片付けまでご協力いただきました。この他、たくさんの方々のご協力を賜り、無事に秋季永代経を勤めることができました。

この法要に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。