令和2年 高松興正寺別院 夏まいり

7月8日(水)午前10時より、高松興正寺別院の夏まいりが勤修されました。

今年は春先より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が拡大し、4月7日に7都府県を対象に出された日本政府による緊急事態宣言が、4月16日には全国に拡大される事態となりました。
マスメディアからは、盛んに「ステイホーム」が叫ばれ、学校の休校をはじめ、店舗の休業やイベントの自粛など、それまでの当たり前の生活が大きく様変わりしました。

高松興正寺別院でも3月より定例法座を自粛し、春の法要は参拝者なしの「内勤め」で行われました。

その後、感染状況が少し落ち着き、5月25日に日本政府による緊急事態宣言が全国で解除されたことを受け、6月より定例法座を再開いたしました。

今回の夏まいり開催の是非についても検討されましたが、「いつまでも休んでいてはお参りさんの気持ちが離れてしまう」という柴田輪番の熱意によって、手指消毒の励行、マスクの着用、密集を避けることなど、できる限りの対策を施した上で、今回の夏まいりを開催させていただく運びとなりました。

今年は梅雨前線が大変活発で、当日の未明には雷を伴う激しい雨が降りましたが、朝にはそれまでの天候が嘘のように、素晴らしい晴天に恵まれました。

夏まいりは、朝座のみの法要となり、この日は43名が参拝されました。
僧侶もお参りさんも、第一声で「久しぶりやね。元気やった?」という言葉が交わされ、たくさんの方が法要を待たれていたことを実感しました。

午前10時より、『正信偈』(中拍子)をお参りさんと声を合わせてお勤めしました。
この日は10名の内陣出勤があり、副輪番の松尾修淨氏が句頭を出しました。
出勤者は全員、マスクを着用してのお勤めとなりました。
お参りさんもマスクを着用の上、たくさんの方が自分の本を持参され、熱心にお勤めをされている姿がありました。

お勤めの後は、柴田輪番から挨拶があり、今回の夏まいり開催に至った経緯や、数日前から九州各地をはじめ、岐阜県、長野県など、広範囲にわたって甚大な被害を出した「令和2年豪雨」を痛むお言葉がありました。

その後、休憩に入り、休憩時間には別院から冷たいお茶とお菓子の接待がありました。
また、新型コロナウイルス感染症の予防策として、窓を開けての換気が行われました。

休憩の後は、まんのう町 慈泉寺 片岡妙晶先生による法話がありました。

片岡先生は、「前に生まれん者は後を導き、後に生まれん者は前を訪え」という、『安楽集』の言葉を讃題に掲げられ、「私たちはどうすれば本当の安心、本当の幸せをいただくことができるのか」というお話をしてくださいました。

先生は自粛期間中にSNSで呼びかけを行い、色んな方から相談を受けられたそうです。そのなかで、今回のコロナ禍に当たって、「何かしたいけど、多額の寄付など大きなことはできません。こんな私に具体的にできることは何でしょうか?」という質問があったそうです。

これについて先生は、マザー・テレサさんの「家に帰って家族を愛しなさい」という言葉を紹介され、何か大きなことをしなくても、一人ひとりが身近な人を大切に思うだけで、それが世界平和につながるということを教えてくださいました。

具体的な実践としては、無財の七施(お金を使わず、誰にでもできる布施)のなかから「和顔愛語」について紹介され、「優しい顔で愛のある言葉、『ありがとう』を投げかけましよう。これは誰にでもできることです」と教えてくださり、「このことを私たちに思い出させてくださるのが『南無阿弥陀仏』のお念仏なのです」と、お念仏のはたらきについて、分かりやすくお話してくださいました。

また、この日参拝された年配の方に向けて、「人生、苦しいことが多いかもしれないですが、いつまでも楽しい姿を見せてください。皆さんの明るく楽しい姿を見て、若い人が『自分もあんなお年寄りになりたい』と思うのです。お寺には子どもからお年寄りまで、色んな年齢の人が集います。若い人だけでもダメで、年配の方だけでもダメです。年配の方には若い人を導く役割があり、若い人はそんな年配の方の生き様に学んでいかなければなりません。徐々に人との関わりが薄れているこんな時代だからこそ、お寺参りが大事なのです」という旨の、とても力強いお言葉をいただきました。

最後に元号の「令和」についてのお話をされ、令和には「Beautiful Harmony=美しい調和」という意味があり、「人間は協力しないといけない」というメッセージが詰まっていることを教えてくださいました。

真宗の教えをよく聞いて、それを他に伝えていく。また、自分自身が身を持って真宗の教えに生きる。
これによってご縁がどんどん広がり、それがまた、巡り巡って自分自身の幸せになることを教えてくださいました。

とても分かりやすい口調で、お参りさんも片岡先生のお話に深く頷かれている様子でした。

法話の後は、全員で『恩徳讃』を唱和して法要を終えました。
お参りさんには、別院からのお土産として、帰りにパンとお茶が配られました。

内陣の準備と片付けに式務部から4人、外陣・参拝席の準備から当日のお手伝い、そして片付けまで、教化参拝部から8人のご協力を賜りました。この他、たくさんの方々のご協力を賜り、夏まいりを無事に勤めることができました。
この法要に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。