平成30年 高松興正寺別院 秋季永代経法要ならびに本山大相続講

10月17日(水)高松興正寺別院の秋季永代経法要ならびに本山大相続講が勤められました。この日は秋晴れに恵まれ、とても過ごしやすい一日となりました。午前、午後ともに80人近くの方がお参りくださいました。

午前10時から秋季永代経法要が勤められ、『阿弥陀経』を正宗分にしたお勤めが行われました。各組から代表出勤を賜り、第4組 徳泉寺住職の寺内淳聴氏が法中登壇を行いました。代表出勤と自由出勤を合わせて、16名の内陣出勤がありました。

法話は本山布教使 中山町 妙楽寺衆徒 川田慈恵先生にお願いしました。
先生は、ご自身が紫外線アレルギーになられたことで、今まで喜べていた太陽の光が煩わしく思えるようになったことや、空き巣を取り押さえてくれた恩人であるおまわりさんに、後日、駐車違反を取られて嫌な気持ちになった体験をお話してくださり、「私たちが一見、幸せだと考えていることは、私の都合であり、状況が変われば幸せとは思えなくなる」ことを教えてくださいました。

この他、高齢になってから水泳教室に通いはじめた、あるおばあちゃんのお話を紹介されました。周囲はこのおばあちゃんのことを「健康のために頑張っていて偉いなあ」と思っていましたが、おばあちゃんの家族の話によると、「うちのおばあちゃんはケチで、死んだ後、三途の川の渡し賃がもったいないから、自分で三途の川を泳げるように水泳を習っているのです」という驚きの動機だったそうです。そして、そのことについて家族が、「もう一回帰ってきたら困るから、折り返しのターンだけは教えないでくださいね」と、水泳教室の先生にお願いをしたというお話でした。このお話を受けて先生は、「私たちは健康で長生きをすることが幸せだと考えていますが、自分が本当に安らげる場所がなければ、幸せとは言えないのではないですか?」と、問いかけられました。

最後に、親鸞聖人がお書きになった『現世利益和讃』について紹介され、「自分が一番辛いとき、一番そばにいて欲しいときに、仏さまは必ずお護りくださいます。お寺に参ったときには、自分が仏さまから護られているという喜びを感じてみてください」と、締めくくられました。


おときは、法専寺、正信寺、長覚寺の仏教婦人会の皆さまが、うどんとバラ寿司を振る舞ってくださいました。また、坊守会からは、佐々木敬子会長、三好副会長をはじめ、綾北組の坊守さん2名がお手伝いに来てくださいました。心のこもったおときに、お参りさんも法中も大変満足した様子でした。


おときの後は本堂係が教化参拝部から相続講委員へと引き継がれ、本山大相続講が開講しました。午後1時、法中とお参りさん全員で声を合わせて『讃仏偈』をお勤めしました。お勤め後、相続講委員長の川田信五氏から挨拶があり、早速、一人目の法話に入ります。

本山大相続講とは、文政11年(1828)4月6日に興正寺第27世 本寂上人が「親鸞聖人のお念仏の教えを相続し、繁昌させてほしい」という願いを込めて、讃岐の地にご消息を下されたのがはじまりです。

「相続」という言葉には、「お念仏の教えを聴聞するための道場(本山)を護持してほしい」ことと、「お念仏の教えをよく聴聞し、それを次の世代に正しく伝えてほしい」という願いが込められているそうです。

そのため、ほとんどの時間が法話に充てられ、法話は一人20分の持ち時間で、複数の布教使が続けて行う形態になっています。僧侶にとっては布教使の育成の場となり、お参りさんにとっては一度に複数の先生のお話が聞ける、大変有り難い法座です。

現在は、各組の寺院を会所とした相続講と高松興正寺別院を会所とした相続講の年2回行われています。

この日の法話講師は以下の3名です。
田中 慶一 師(西園寺住職)
福家 秀徳 師(長楽寺住職)
赤松 円心 師(正行寺住職)
講師の選出は、各組に振り当てられており、今回は綾北組、綾南組、第1組から選出されました。

法話の後は、高松興正寺別院 輪番 柴田好政氏によるご消息披露がありました。
ご消息披露とは、本寂上人が下されたご消息の原文を皆さんの前で読み上げるものです。

ご消息披露の後は、本山布教使 御厩町 専光寺住職 佐々木安徳先生による復演がありました。復演とは、ご消息の心を皆さんに分かりやすくお伝えするための法話です。

先生は「仏さまの願いを相続していくことが私たちの務めです。私たちは親鸞聖人に直接お目にかかったことはありませんが、親鸞聖人が生きてこられたいのちの営みが、親鸞という名前として今に残っているのです」と切り出され、「仏さまの願いを聞き、それを相続していくということは、その願いは限られた一生だけの願いではなく、限りない未来にまで続いていく願いなのです」と、教えてくださいました。したがって、私たちが歩む一歩一歩が、後から来た人のための足跡になるのでありましょう。

また、見えない、聞こえない、話せない、考えられない、体を動かせないという、五重苦の方の介護をされたあるご婦人の体験を紹介され、「お念仏を申せない人、お念仏を聞けない人、お念仏を感じられない人は、どうすればいいのでしょうか?」という問題提起をされました。先生は「それでもいのちは生きようとしています。いのちがあれば、身振り手振り、たとえ1%でも仏さまの願いを感じる世界があるはずです。介護をする人は、ただ横にいるだけで、無力さを感じるかもしれませんが、介護される人の1%のなかに、ちゃんと仏さまの願いを受け止めることができます」と、教えてくださいました。

最後に、「歳を取るということは、つまらないことですし、悲しい思いもあるわけですが、それを自分の頭ではなくて、笑いで乗り切りましょう」「お念仏の話をしっかり聞いて、悲しみを自分から笑いで突っぱねたらいいのです」「笑いは、人間が生み出したとても素晴らしい文化なのです」というアドバイスを頂戴しました。

復演の後は、相続講副委員長の高松和範氏から挨拶があり、法中とお参りさん全員で『恩徳讃』を唱和して、午後3時に閉講となりました。

朝から長時間にわたる法要でしたが、ほとんどの方が最初から最後までご聴聞されていました。お経本を見ながら法中と一緒に声を出してお勤めされる姿や、先生のお話を聞き留めようと、熱心にメモを取りながらご聴聞される姿も見られました。

知堂9人、教化参拝8人の役職者には、前々日の法要準備から午前中の秋季永代経法要までご協力いただきました。相続講委員10人の役職者には、午後の本山大相続講から法要の片付けまでご協力いただきました。

この他、おときの接待をしてくださった仏教婦人会の皆さま、坊守会の皆さまなど、たくさんの方々のご協力を賜りまして、無事に秋季永代経法要ならびに本山大相続講を勤めることができました。

この法要に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。