平成29年 本山大相続講 会所:綾北組 真教寺
5月12日(金)午前10時~午後3時まで、綾北組の国分寺町新居 真教寺において、本山大相続講が勤められました。
本山大相続講とは、文政11年(1828)4月6日に興正寺第27世 本寂上人が「親鸞聖人のお念仏の教えを相続し、繁昌させてほしい」という願いを込めて、讃岐の地にご消息を下されたのがはじまりです。
この「相続」という言葉には、お念仏の教えを聴聞するための道場(本山)を護持してほしいことと、私たちがお念仏の教えをよく聴聞し、それを次の世代に正しく伝えてほしいという願いが込められております。
時代とともに法座の形態は変わってきましたが、現在は春に東讃教区各組を会所として勤められ、秋には高松興正寺別院において勤められております。
法話は一人20分程度の持ち時間で、複数の布教使が行います。
そのため、僧侶にとっては、布教使の育成の場にもなっています。
また、お参りさんにとっては、一度にたくさんの布教使のお話が聞ける、大変有り難い法座となっています。
この日は曇り空でしたが、時折、心地よい風が吹き、とても過ごしやすい一日でした。
午前10時に、僧侶とお参りさんで一緒に声を合せて、『讃仏偈』をお勤めし、開講となりました。
その後、相続講委員長である綾北組 石舟寺住職の谷上和順氏から挨拶があった後、早速、法話に入りました。
この日の法話講師は以下の通りです。
<午前>
田中 慶一 師(西園寺衆徒)
安本 正貴 師(正信寺住職)
林 和英 師(覚善寺衆徒)
吉本 正文 師(法華寺住職)
<午後>
綾 浄慎 師(正蓮寺衆徒)
秋山 和信 師(慈照寺住職) ※節談説教
田中慶一先生と安本正貴先生は、御祖父様の代から布教使として各所で馴染みがあり、この日のお参りさんも御祖父様を懐かしむ声や、お孫様の法話が聞けるということで、とても感慨深いものがあったようです。
お念仏の教えが、次世代に確かに相続されていることを肌身で感じました。
吉本正文先生からは、相続講にちなんで自坊に伝わる本寂上人直筆のお名号を披露してくださいました。また、お母さんと子どもの心温まるエピソードを紹介され、「母親が子を思う慈悲の気持ちを通して、阿弥陀さまの願いに気づいてほしい」こと、そして、「大いなるお陰さまをもって、命ある限り自分に与えられた使命をまっとうしてほしい」という旨のお話を頂戴しました。
おときは綾北組の坊守さんや真教寺さんの門信徒の皆様によって、うどんと醤油豆が振る舞われました。
また、隣接の萬燈珈琲店がこの日は貸切となり、お参りさんにドリンクの無料サービスやフードメニューの割引サービスが行われました。休憩時間には本堂にお菓子も差し出され、とても行き届いたお接待を受けることができました。
午後の秋山和信先生のお話は、「節談説教」という形式で行われました。節談説教とは、お念仏の歌に節をつけてお参りさんの心情に響かせる法話形式です。今日では馴染みが薄くなりましたが、昔はどこのお寺にも高座があり、節談説教が盛んに行われていたそうです。秋山先生はユーモアでお参りさんを和ませながら、『正信偈』の冒頭にある法蔵菩薩がお浄土を建立され、「南無阿弥陀仏」のお念仏を選び取られた場面を分かりやすくお話してくださいました。また、利井鮮妙和上と三歳の子どもを亡くされたお母さんとのエピソードから、コップに水を入れていて思わずいっぱいにしてこぼしてしまったお母さんに、利井和上が「いっぱいになっても、さらに仏さまははたらきかけてくださっていますね」と仰ったことを紹介してくださいました。
法話の後は、真教寺住職 佐々木諦剛氏によるご消息披露がありました。
ご消息披露とは、本寂上人が下されたご消息を原文のまま皆さんの前で読み上げるものです。
ご消息披露の後は、本山布教使 専光寺住職 佐々木安徳 師による復演がありました。
復演とは、ご消息の言葉が現代の人には少し分かりにくいため、ご消息のお心を分かりやすく伝えるためのお話です。
佐々木先生からは、「浄土真宗は、”本願を信じ念仏を申さば仏になる”という言葉に収まります。お念仏は阿弥陀さまの智慧と慈悲が言葉になったものです。その言葉が身につくまで称えて、阿弥陀さまのお心を聞いてほしい」という旨のお話を頂戴しました。また、お年寄りに向けて、「嫌なことはなくならないけれども、それを超えていくことはできます。どうにもならないことは笑い飛ばしてみてはどうでしょうか。業を笑ってください。そして、よき言葉を口にしましょう。よき言葉とは、私に寄り添ってくれる言葉であり、それが誰かの心に残ったり、誰かを勇気づけたり、ずっと後まで残っていく言葉です」というアドバイスがありました。
最後は僧侶とお参りさん全員で『恩徳讃』を唱和して、閉講となりました。
相続講のために場所を提供してくださり、当日もお手伝いをいただいた真教寺の皆様をはじめ、準備と片付けを担当された綾北組の皆様、当日のお手伝いを担当された相続講委員の皆様など、たくさんの方々のご協力を賜りまして、無事に本山大相続講を勤めることができました。
この法座に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。