令和6年 高松興正寺別院 夏まいり

7月10日(水)午前10時より、高松興正寺別院の夏まいりが勤修されました。

この日はやや曇り空となりましたが、気温が高く蒸し暑い一日でした。
そんな中、20名ほどの方が参拝してくださいました。

午前10時より、『正信偈』(中拍子)をお参りさんと声を合わせてお勤めしました。
この日は7名の内陣出勤があり、この7月より当院の輪番に就任した松尾修浄氏が導師を勤め、参拝者とともに声を合わせて、元気の良いお勤めができました。

外陣には知堂4名が出勤しました。
堂内では勤行本の貸し出しも行われ、熱心にお勤めをされている姿がありました。

お勤めの後は、松尾輪番の挨拶があり、「任期3年を無事に務め上げたい」という抱負が述べられました。

その後、10分ほどの休憩に入りました。
休憩時間には別院から冷たいお茶の接待があり、熱中症対策にも配慮しました。

休憩の後は、本山布教使 御厩町 専光寺住職の佐々木安徳先生の法話となりました。

先生は「浄土にてかならずかならずまちまゐらせ候べし」という親鸞聖人の『末灯鈔』の言葉を讃題に掲げられ、「浄土に生まれること」についてお話してくださいました。

先生は最初に、「浄土に生まれたいですか?」と問いかけられ、「分かったような、分からないような感じで、私たちは救いの内容が分かっていませんね」と指摘されました。

続けて先生は、仏教が説く苦悩の原因として、「無明」と「我執」の2点を挙げられて、無明については、「何のために生まれてきたのか目的が分からない」こと。我執については、「分かっちゃいるけどやめられない心」として押さえられました。

先生は今年、75歳を迎えられ、後期高齢者になられたということで、前期高齢者と後期高齢者の違いについても訪ねられました。

もちろん、前期と後期の名称や区別は世間が付けたものですが、先生は「前期の頃は世間のものさしを基準にしています。しかし、後期になると死生観が基準になってくるのではないでしょうか」と指摘されました。

死生観とは、「死んだらどこに行くのか」といった問いであり、宗教の根本であります。

冒頭の『末灯鈔』の言葉は、先生が駆け出しの頃に恩師からいただいた言葉だそうです。恩師は先生に「親鸞聖人が待っておられるんだ。有り難いな」と仰ったそうです。

その頃の先生は、あまりピンとこなかったそうですが、いのちの流れとともに、「ああそうだった」と、味わえるようになられたそうです。

そして、浄土については、「あるやら、ないやらではなく、大切な人が待ってくれている世界であり、必ずまた会える世界です」と教えてくださいました。

そのことを受けて先生は、2歳の娘を亡くされた仏教学者の花山勝友先生が、5歳のお姉ちゃんに「妹はどこに行ったの?」と尋ねられたエピソードを紹介してくださいました。

花山先生が「極楽で阿弥陀さまが妹を抱きしめて楽しく過ごしているよ」と答えられると、お姉ちゃんは、「私も極楽に行きたいな」と言ったそうです。

花山先生はもう泣くしかなかったそうです。

しかし、お父さんが泣き崩れる姿を見たお姉ちゃんは、「極楽に行くのやめた。二人とも行ったら、お父さんがもっと悲しむから」と言ったそうで、この言葉を受けて花山先生は、娘のために悲しむのを止めて立ち直ろうと誓われたそうです。

それから、18歳の女の子が初めて曾祖父の葬儀に参列したときの記事も紹介してくださいました。

葬儀の作法など、何もかも分からない中でしたが、親戚の人が曾祖父の思い出を語り合って、楽しそうにしている様子を見て、「とても温かい気持ちになりました」と回想されたそうです。

そして、「曾祖父は私の5倍生きて、これだけ大きい存在になったのです。私もこれからどれだけの人と交際して、どんな出来事に出会うのか、少し人生がわくわくしてきました」という感想を持ったそうです。

よく、亡くなったご先祖に対して「仏になっているかな?」と仰る方がありますが、先生は「今、あなたの両手が合わさっていますね。それが仏のはたらきなのです」と教えてくださいました。

そして、「知識ではなく、死生観の中で言葉を考えていくことが大切です」と教えてくださり、最後にもう一度、親鸞聖人の言葉を味わいながらお話を締めくくられました。

この日の先生は喉の調子が悪く、体調が万全ではない中でのご法話でしたが、貴重なお話を有り難うございました。

法話の後は、全員で『恩徳讃』を唱和して法要を終えました。
帰りに別院からのお土産として、お参りさんにパンとジュースが配られました。

法要の準備から片付けまで、式務部から4人、教化参拝部から10人のご協力を賜りました。
この他、たくさんの方々のご協力を賜り、無事に夏まいりを勤めることができました。
この法要に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。