令和5年 高松興正寺別院 春の法要

4月27日(木)朝座10時、昼座1時にて、高松興正寺別院 春の法要が勤修されました。
新型コロナウイルスの影響により、長くおときが中止されていましたが、感染状況が落ち着きつつあることと、東讃教区連合仏教婦人会様のご厚意により、約3年ぶりにおときが実施され、コロナ前と同様の形で、午前・午後の一日法要を勤めることができました。

春の法要は、朝座が春季永代経、昼座が親鸞聖人御誕生会の併修となります。
この日は雲一つない素晴らしい晴天に恵まれ、朝座54人、昼座75人が参拝してくださいました。

朝座は『阿弥陀経』を正宗分にしたお勤めが行われ、香南組 勝光寺の橘 正遵氏が法中登壇を行いました。
昼座は維那の川田信五氏の句頭で、『正信偈』(中拍子)をお参りさんと一緒にお勤めしました。
両座とも各組から代表出勤を賜り、自由出勤も合わせて、各座15名ほどの内陣出勤がありました。

法話は本山布教使 東かがわ市東山 正行寺住職の赤松円心先生にお願いしました。

赤松先生は、黒板に本願の第十八願文を書かれ、阿弥陀さまの誓願についてお話してくださいました。

阿弥陀さまの誓願は、古くより「親心」と譬えられます。
「すべての者を必ず救い取る」という阿弥陀さまの誓いには、目当てがあります。
先生は、『歎異抄』の言葉を借りながら、「罪悪深重、煩悩熾盛の衆生こそが救いの目当てです」と教えてくださり、芥川龍之介さんの『蜘蛛の糸』の話を紹介してくださいました。

地獄にカンダタという男がいました。カンダタは自らの悪業によって地獄に堕ちましたが、お釈迦さまは、カンダタが、「生前にただ一度だけ蜘蛛を助けた」という善業があったことを思い出されます。
そこで、お釈迦さまはカンダタを救うために、極楽から地獄に蜘蛛の糸を垂らしました。
カンダタは、目の前に垂れてきた蜘蛛の糸を地獄から抜け出す好機と捉え、一生懸命、蜘蛛の糸を手繰りながら極楽を目指して登り続けます。
しばらくして、カンダタがふと下を見ると、自分の後を大勢の者が登って来ているのが見えました。
せっかくの糸が重さで切れたら大変です。
カンダタは、「コラ!この糸はワシのものじゃ、降りろ!」と叫びました。
するとその瞬間、カンダタのすぐ上で糸がプツンと切れて、カンダタは真っ逆さまに地獄に堕ちていったという有名なお話です。

このお話を受けて先生は、「どうして糸が切れたのでしょうか?」と、問いかけられました。

一神教の国では、「お釈迦さまが切った」と考える方が多いそうですが、先生は「ひとえに、カンダタが造った罪の重さです。阿弥陀さまの誓願は、こんなカンダタを救うと仰っているのです」と教えてくださいました。

そして、先生は「カンダタとは誰のことでしょうか?私たち一人ひとりがカンダタではありませんか?」と問いかけられました。

『歎異抄』に「弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、ひとえに親鸞一人がためなりけり」とあります。

「親心の目当ては、私でありました」と、阿弥陀さまの誓願を私ごととして聞かせていただくことの大切さを教えてくださいました。

午後からは、本願文の後半「唯除五逆 誹謗正法」の部分を深くお話してくださいました。

いわゆる唯除文です。親殺しに代表される五逆罪を犯した者、そして、仏法を謗る者は、阿弥陀さまの救いから除かれるということです。

これについて先生は、親鸞聖人の解釈を踏まえながら、「唯除というのは、決して許されない罪だけれども、見捨てることはなおできない仏の悲しみの心です」と教えてくださいました。

最後に、20年以上前の新聞記事で、覚醒剤によって7回目の逮捕をされた男の裁判に、84歳になる母親が、杖をつきながら、付添人を頼んでまで、遠方から駆け付けたという記事を紹介してくださいました。

母親は裁判官に「今生の別れに息子の手を握らせてください」とお願いしたところ、「短い時間なら結構です」と、認められたそうです。

これは異例の措置だそうです。

母親は何も言わず、ただ泣きながら息子の手を握るのみだったそうです。
そんな母親の姿に、息子は声を上げて泣いたという記事でした。

先生は、自らも保護司をされているそうで、これまでにたくさんの方のお話を聞かれてきたそうです。

この母親には、5人の子どもがいたそうですが、特にこの息子のことが心配で、放っておけなかったのでありましょう。どんなに罪を犯しても見捨てることができない親の悲しみ。

まさに、「たとい罪業は深重なりとも、かならず弥陀如来はすくいましますべし」(「末代無智章」)であります。

おときは、東讃教区連合仏教婦人会様が、ご厚意で、うどんと鰆の押し寿司を振る舞ってくださいました。
とても心温まる接待をしてくださり、お参りさんも大変満足した様子でした。
東讃教区連合仏教婦人会様は、お参りもバス1台手配してくださり、多大なご協力に、この場をお借りして感謝申し上げます。

また、東讃教区坊守会様からもお手伝いに参加してくださいました。

この他、維那2人、知堂8人、教化参拝6人の役職者、出勤法中の皆様など、たくさんの方々のご協力を賜りまして、無事に春の法要を勤めることができました。

この法要に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。