令和7年 高松興正寺別院 夏まいり
7月25日(金)午前10時より、高松興正寺別院の夏まいりが勤修されました。
この日は晴天に恵まれましたが、朝から気温がぐんぐん上がり、30度をゆうに超える大変暑い中の法要となりました。そんな中、25名ほどの方が参拝してくださいました。
午前10時より、『正信偈』(中拍子)のお勤めが行われました。
この日は5名の内陣出勤があり、外陣には知堂4名が出勤しました。
輪番の松尾修浄氏が導師を勤め、参拝者とともに声を合わせて、元気の良いお勤めができました。
この夏まいりでは、先般5月11日(日)に厳修された、当院の宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年 慶讃法要の記念として新調された夏用の内陣打敷・水引・礼盤掛けが披露されました。
柄は極楽浄土の鳳凰があしらわれております。
今回の慶讃法要にあたって、皆様方から賜りました貴重なご厚志の賜物であります。
勤行後の輪番挨拶でも、改めてご厚志に対する御礼の言葉が述べられました。
ここで一旦、10分ほどの休憩に入りました。
休憩時間には別院から冷たいお茶とお菓子の接待があり、熱中症対策に塩飴も提供されました。
休憩の後は、本山布教使 西ハゼ町 大乗寺住職の中原大道先生の法話となりました。
先生は「極重の悪人は、ただ仏を称すべし。我また、かの摂取の中にあれども、煩悩、眼を障さえて見たてまつらずといえども、大悲ものうきことなくして、常に我を照らしたまう」という『正信偈』の言葉を讃題に掲げられ、「お念仏によって、わが身の煩悩の姿が照らし出されること」についてお話してくださいました。
先生はまず、「大阪・関西万博に行かれた方ありますか?」と問いかけられ、前回1970年の大阪万博のときに未来の技術として紹介された「携帯電話、電気自動車」などが、今では当たり前になっていることを回想されました。
しかし先生は、「便利なようで便利ではありません」と仰います。
その例として、インターネットの情報など、本当のことと嘘が入り混じってしまい、何を信じていいのか分からない現代の状況を危惧されました。その結果として、詐欺が横行する世の中となってしまいました。
先生は『歎異抄』から、「善悪のふたつ総じてもって存知せざるなり」「煩悩具足の凡夫、火宅無常の世界は、よろずのこと、みなもって、そらごとたわごと、まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておわします」という言葉を紹介してくださいました。
親鸞聖人は、「私は仏さまのように善い悪いは分かりません」と仰っているのです。そして、「この私は煩悩具足の身であり、世の中も変わっていきますから、みなそらごと、たわごとです。ただお念仏だけが真実です」と言い切っておられるのです。
先生はある日、近所の女性から恋愛相談を受けられたそうです。
最近はマッチングアプリを使って、自分に合った方と結婚される方も多いそうです。
この女性の悩みは、お相手から「苦労させたくないから、結婚したら家にいて欲しい」と言われたことにあるそうです。
先生は「お相手の方に会ったこともありませんし、これこそ善い悪いと言えませんね」と仰りながらも、自分の願望を押し付けている点を懸念されました。そして、「仏さまのお気持ちは変わりませんが、人間の気持ちは移り変わるものです」と教えてくださいました。
また先生は、東井義雄先生の「近いといえども見えず」という言葉を紹介され、「人のことはよく見えるのに、自分のことが見えないのが煩悩を抱える私たちです」と教えてくださいました。
先生は15年前に前住であるお父様を亡くされましたが、家族には厳しい方であったそうです。
しかし、葬儀のときに弔問客から聞かされた話から、お父様の優しい面も分かったそうで、先生は「家族は父の一面しか見えていませんでした」と回想されました。
そして、「私のものの見方、言葉には根拠がないのです。本当に信頼できるのはお念仏のみです」と押さえてくださいました。
また先生は、自死で主人を亡くされたご門徒さんのことを回想され、残された家族もあれこれと考えてしまって苦しいことを訴えられました。
そんな中、ある親族の方が「憶測は本当のことではないから、考えないようにしています。今は極楽に参って、ご先祖に会って、色々と話を聞いてもらっていると思います」と仰ったことを紹介してくださいました。
讃題の言葉は、「極重の悪人は、ただ仏を称すべし」から始まる『正信偈』の言葉でした。
「極重の悪人」とは、「煩悩を持っているから正しくものを見えていないと自覚した人」と押さえられ、そんな私たちだからこそ、なおさら仏さまから願いをかけられていることを教えてくださいました。
貴重なお話を有り難うございました。
法話の後は、全員で『恩徳讃』を唱和して法要を終えました。
帰りに別院からのお土産として、お参りさんにあんぱんとお茶が配られました。
法要の準備から片付けまで、式務部から4人、教化参拝部から6人のご協力を賜りました。
この他、たくさんの方々のご協力を賜り、無事に夏まいりを勤めることができました。
この法要に携わったすべての方に対して、厚く御礼を申し上げます。